北朝鮮国民も泣き崩れた「最貧母娘」の悲惨な生活実態

キムさんには親戚もいないため、羅先市安全部(警察署)が、洞事務所(末端の行政機関)に死亡届を出し、女盟のメンバーと人民班の人々が一緒に母子の葬儀と、遺品の片付けを行った。

現場は、極めて悲惨なものだった。

「キムさんの家を片付けながら、女盟のメンバーたちは泣き崩れた。家に残っている食糧は、茶碗1杯分のトウモロコシの粉と、数さじの塩だけで、キムさんの極貧ぶりを肌で感じたからだ」

食糧政策の失敗により、慢性的な食糧難が続いている北朝鮮だが、それでもほとんどの家には醤油や味噌、食用油などの基本的な調味料や野菜くらいはあるものだ。だが、キムさんの家庭はそれすらない、いわゆる「絶糧世帯」(食べ物が底をつき、それを買う現金すらない世帯)だったのだ。(参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為

権力に批判

その実態を目の当たりにした人々は大きな衝撃を受け、心を痛め、涙を流した。